さいきん いのちをだいじにしないニュースばかり
さいきん いのちをだいじにしないことばかり
さいきん いのちをかるくするはなしばかり
さいきん いのちをかるくふきとばす事件ばかり
おいら さいきん 祖父を思い出すことばかり
むかし、母屋のはなれに、むかし小さな池があった
井戸をはさんで東に離れ家、西に池があり、その池のよこにはヤギ小屋があり
池には、蓮の花が浮いていた
いつのまにか井戸が枯れて池がなくなったその池の上にヤギ小屋を建てようと
埋める作業をしたのはいつだったか忘れた 小屋が立った
しばらくはヤギ小屋にヤギがいたおいらはそのヤギたちの
めんどうをみる係りだった世話役だねヤギの乳は滋養にいいよと隣のじいさんが
貰いに来た 近所の主婦たちも、赤ちゃんを抱いてヤギ乳をチョーダイといって訪ねてきた
みんな小学校へあがるころ、おいらの一番上の兄が東京へ旅立った
旅費はハンサムなヤギが立て替えてくれた
身を売ってくれたそのヤギの子が大きくなって乳を出すころ
二番目の兄がまた東京へ旅立った
そのときもまたヤギの子が身を売ってくれていた
うちでヤギ汁はつくらない食べたこともない
何年かして兄たちが帰ってきたおいらは高校生だったけれどまだヤギたちがいた
草刈枝打ちサトウキビの葉っぱ、みなヤギたちの食用だった 何年かしておいらは
大学生になった いそがしい毎日でヤギの世話ができなくなった そのかわり役場で
消防の夜間の宿直のアルバイトをはじめた 忙しくなったのはそのせいだった
気がつくとヤギ小屋からヤギがいなくなっていた どーしたのか、祖父に聞くことも
しなかった、母親に聞くこともしなかった 食用に売っちゃったのだから
おいらが食べ物をせわしないから自分が食べ物になってしまったのだ
あのヤギ乳を飲んでいた若者たちが引っ張っていって青年祝いの食べ物になってしまったのだ
命をつなぐために命を差し出したのだ 祖父も命を差し出したことがある
池の上に立っていたヤギ小屋を壊して結婚する兄の祝宴後のすみかにコンクリートづくりの
立派な離れを建てることになったので、
大工のおじさんと二人で兄が基礎穴をほりはじめたら、むかし池だった中から不発弾が出てきた
それをかたづけないと離れの家は建たない、村のおまわりさんに連絡し、警察署にとどけでたが
それを片付ける処理班というのがいないので、不発弾を持ってきてくれ、という。
そしたら預かる、ということらしい。ヤマトに復帰する前のはなしなので自衛隊が処理に
来るということもない、警察に処理班があって、とっても忙しい、なんせ、一メートル四方に
一つ、バクダンが落ちた島のはなしなので 不発弾があっちこっちにあって、処理が間に合わない
なので、どうか、預かるので持ってきてくださいと警察署。父の兄弟がその伝言を伝えると
しょうがない、池のバクダンは、このおじさんが片付けて持って行こうと主張したら
待て待てと、おじさんの父、お父さんの父さんが 待て、待て、という。
祖父はいう。若い人はあしたがあるから順番で年寄りがやるしごと みんな離れていなさい
そういって昔、池だった穴の中へ入り、スイカのような錆びた不発弾を両手に持ってきて
そのまま神様にささげるようなかっこうで村の交番まで届けた
その後、バクダンがどうなったか オイラはしらないけど
おいらはヤギの目の人がアメリカアのように見え、神様に贈り物を捧げもった祖父が
なんだか神妙に見えたのだった あれいらい、おいらの命はあるものでなく つながれているものだということが おいらの知るところとなった。
さいきん いのちをだいじにしないことばかり
さいきん いのちをかるくするはなしばかり
さいきん いのちをかるくふきとばす事件ばかり
おいら さいきん 祖父を思い出すことばかり
むかし、母屋のはなれに、むかし小さな池があった
井戸をはさんで東に離れ家、西に池があり、その池のよこにはヤギ小屋があり
池には、蓮の花が浮いていた
いつのまにか井戸が枯れて池がなくなったその池の上にヤギ小屋を建てようと
埋める作業をしたのはいつだったか忘れた 小屋が立った
しばらくはヤギ小屋にヤギがいたおいらはそのヤギたちの
めんどうをみる係りだった世話役だねヤギの乳は滋養にいいよと隣のじいさんが
貰いに来た 近所の主婦たちも、赤ちゃんを抱いてヤギ乳をチョーダイといって訪ねてきた
みんな小学校へあがるころ、おいらの一番上の兄が東京へ旅立った
旅費はハンサムなヤギが立て替えてくれた
身を売ってくれたそのヤギの子が大きくなって乳を出すころ
二番目の兄がまた東京へ旅立った
そのときもまたヤギの子が身を売ってくれていた
うちでヤギ汁はつくらない食べたこともない
何年かして兄たちが帰ってきたおいらは高校生だったけれどまだヤギたちがいた
草刈枝打ちサトウキビの葉っぱ、みなヤギたちの食用だった 何年かしておいらは
大学生になった いそがしい毎日でヤギの世話ができなくなった そのかわり役場で
消防の夜間の宿直のアルバイトをはじめた 忙しくなったのはそのせいだった
気がつくとヤギ小屋からヤギがいなくなっていた どーしたのか、祖父に聞くことも
しなかった、母親に聞くこともしなかった 食用に売っちゃったのだから
おいらが食べ物をせわしないから自分が食べ物になってしまったのだ
あのヤギ乳を飲んでいた若者たちが引っ張っていって青年祝いの食べ物になってしまったのだ
命をつなぐために命を差し出したのだ 祖父も命を差し出したことがある
池の上に立っていたヤギ小屋を壊して結婚する兄の祝宴後のすみかにコンクリートづくりの
立派な離れを建てることになったので、
大工のおじさんと二人で兄が基礎穴をほりはじめたら、むかし池だった中から不発弾が出てきた
それをかたづけないと離れの家は建たない、村のおまわりさんに連絡し、警察署にとどけでたが
それを片付ける処理班というのがいないので、不発弾を持ってきてくれ、という。
そしたら預かる、ということらしい。ヤマトに復帰する前のはなしなので自衛隊が処理に
来るということもない、警察に処理班があって、とっても忙しい、なんせ、一メートル四方に
一つ、バクダンが落ちた島のはなしなので 不発弾があっちこっちにあって、処理が間に合わない
なので、どうか、預かるので持ってきてくださいと警察署。父の兄弟がその伝言を伝えると
しょうがない、池のバクダンは、このおじさんが片付けて持って行こうと主張したら
待て待てと、おじさんの父、お父さんの父さんが 待て、待て、という。
祖父はいう。若い人はあしたがあるから順番で年寄りがやるしごと みんな離れていなさい
そういって昔、池だった穴の中へ入り、スイカのような錆びた不発弾を両手に持ってきて
そのまま神様にささげるようなかっこうで村の交番まで届けた
その後、バクダンがどうなったか オイラはしらないけど
おいらはヤギの目の人がアメリカアのように見え、神様に贈り物を捧げもった祖父が
なんだか神妙に見えたのだった あれいらい、おいらの命はあるものでなく つながれているものだということが おいらの知るところとなった。
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by tamasiro-sango
| 2014-01-04 17:11